短編集〜甘々、逆ハー、無自覚、美少女、ヤンデレ、独占欲、クール、いじめ、溺愛、嫉妬〜

 三毛猫は、なぜほとんどがメスなのか。
 人間界では「遺伝の仕組み」と説明されている。
 だが、それは表向きの話だ。
 本当は――。
 三毛猫のメスは人間世界で生まれ、
 三毛猫のオスは、生まれた瞬間に異世界へ転送される。
 その事実を知る者は、誰もいない。

 俺の名前はレッジェロ。
 どこにでもいる、ごく普通の一般人……だった。
 しかも、気がついたら名前変わってるし。

 帰り道を歩いていたはずなのに、
 突然、頭が真っ白になった。
 視界が揺れ、立っていられなくなる。
「……え?」
 自分が生きているのか、それとも死んでしまったのかさえわからないまま、
 俺の意識は闇へ沈んでいった。

 目を覚ますと、
 見知らぬ場所に立っていた。

 空は青ではなく、
 淡いピンク色。

 その空を、
 虹色の羽を持つカラスのような鳥が悠々と飛んでいる。

「……なんだよ、ここ」
 夢なのかと思った。
 けれど、頬をつねるとちゃんと痛い。
 つまり夢じゃない。

 学校帰りだったことしか思い出せない。
 制服もそのままだ。

 どうしてここへ来たのかも、
 どうやって帰ればいいのかも、まったくわからない。

 知らない場所をむやみに歩くのは危険だ。

 下手に動けば迷うかもしれない。

 そう考えた俺は、その場で誰かが来るのを待つことにした。

 しかし、どれだけ待っても誰も現れない。

 空の色は少しも変わらず、
 昼なのか夜なのかさえ判断できなかった。

 やがて空腹が限界に近づき、
 俺は待つのを諦めて歩き出すことにした。

 しばらく歩くと、
 広場のような場所にたどり着いた。

 そこには何十匹もの三毛猫が集まり、
 思い思いにくつろいでいた。
「三毛猫……?」
 猫がいても、
 人がいるわけじゃない。

 少し安心したものの、
 状況は何も変わらない。

 そのときだった。
「レッジェロにゃん」
 突然、自分の名前を呼ばれた。

 驚いて振り向く。

 そこにいたのは、
 一匹の三毛猫だった。

「……え?」
「ようやく来たにゃ」

 猫が、
 しゃべった。

「うわああああああああああああああああっ!」

 俺の悲鳴はあたりに響き渡り、
 そのまま意識は再び真っ暗になった。