私は小さく息を吐いた。
「……面倒だったわ」
誰に言うでもない独り言。
だが、口元にはわずかな苦笑が浮かんでいた。
あの頃の自分は、たぶん今より“正しかった”。
完璧で、隙がなくて、誰にも文句を言わせなかった。
けれど―――
「楽しくはなかったわね」
それだけは、はっきりと言える。
机の上の帳簿を見る。
数字はまだ小さい。
村もまだ脆い。
それでも、今の方がずっと息がしやすい。
羽根ペンを指で回した、その時だった。
「起きてるか?」
扉の向こうから声がした。
「何?」
扉が開く。
「……面倒だったわ」
誰に言うでもない独り言。
だが、口元にはわずかな苦笑が浮かんでいた。
あの頃の自分は、たぶん今より“正しかった”。
完璧で、隙がなくて、誰にも文句を言わせなかった。
けれど―――
「楽しくはなかったわね」
それだけは、はっきりと言える。
机の上の帳簿を見る。
数字はまだ小さい。
村もまだ脆い。
それでも、今の方がずっと息がしやすい。
羽根ペンを指で回した、その時だった。
「起きてるか?」
扉の向こうから声がした。
「何?」
扉が開く。



