追放された自称悪役令嬢は落ちぶれた元騎士を拾って辺境に返り咲く

―――その時だった。

「きゃーーっ!」

不意に悲鳴が響きわたり、三人は同時に振り向いた。

雪道を、一頭の馬が暴走している。

荷車を引いたまま、村の広場へ向かって一直線だった。

前方には小さな子どもが立ち尽くしている。

「危ない!」

誰かが叫ぶ。

ああ、間に合わない。

私がそう思った瞬間、レオンが動いた。

地面を蹴る音すら聞こえない。

一瞬で子どもの前へ回り込み、左腕で抱き上げると、

そのまま身体をひねり、馬の進路から外れた。

荷車は大きく揺れながら通り過ぎ、雪の山へ突っ込んで止まる。

静寂が場を支配し、数秒間、誰も声を出せなかった。

やがて、堰を切ったように子どもが泣き出す。

「お、お兄ちゃん……っ」

「もう大丈夫だ」

レオンは優しく頭を撫でた。