追放された自称悪役令嬢は落ちぶれた元騎士を拾って辺境に返り咲く

近づく足音にも反応はない。

完全に寝入っている。

「ここまでやるのか」

呆れたような声。

だが、その口調に怒りはなかった。

レオンはそっとエレノアのそばに膝をつく。

顔を覗き込む。

(……本当に)

綺麗な寝顔だった。

王都にいた頃、一度だけ見たどんな飾られた笑顔よりも、よほど自然で。

よほど無防備で。

よほど――人間らしい。

レオンは一瞬だけ視線を逸らす。

そして小さく息を吐いた。

「……軽いな」

そう言いながらも、動きは慎重だった。

片腕を背中に回し、もう片方で膝裏を支える。

右腕に鈍い痛みが走ったが、構わず抱えた。

「お前はもう少し、自分の限界を考えろ」