追放された自称悪役令嬢は落ちぶれた元騎士を拾って辺境に返り咲く

私はその背中を見送る。

「……変な人」

小さく呟く。

返事はない。

ただ、扉が閉まる音だけが残った。

暖炉の火は変わらず燃え続けている。

けれど、その夜の静けさは、少しだけ違って感じられた。

扉が静かに開く音がした。

レオンが外から戻ってくる。

冷気をまとったまま暖炉の前へ視線を向けて、そして――足を止めた。

「……寝てるのか」

そこには、椅子に座ったまま眠り込んでいるエレノアがいた。

机には開いた帳簿。

手にはまだ羽根ペン。

背もたれに軽く寄りかかり、呼吸は穏やかだった。

炎に照らされた横顔は、昼間の鋭さが嘘のように柔らかい。

「……まったく」

レオンは小さく息を吐く。