月影の彼方〜千年の約束〜


結局、夏休みの間は月島家で過ごした。


晴人が帰省していると聞きつけて、家を管理してくれていた親戚夫婦がBBQを開いてくれたりもした。

「たくさん食べてね」

「この家も、晴人君が帰ってきてくれて喜んでいるよ」

そんなことを言われて、少し照れくさかった。


また別の日には、晃が実家から持ってきたテレビゲームで三人で対戦もした。

「なんでオセロは弱いのにテレビゲームは強いんだよ」

「センスだ、センス」

「絶対違うだろ」

そんなくだらないことで笑った。


あっという間の夏休みだった。


「明日で夏休みも終わりかぁ」

縁側でコーラを飲みながら、晃がつまらなそうに言った。

リッカは桜の木の上で昼寝をしている。

風が吹くたびに、銀色の髪が揺れていた。

「最近リッカ、よく寝るよな」

「……そうだな」

晃が桜の木を見上げる。

けれどすぐに視線を逸らした。

「疲れてるんだろ。人間の歳で言ったらもうよぼよぼのおじいちゃんだし」

「なんだそれ」

晴人が笑う。

晃もつられて笑った。


夏の終わりの風が吹く。


「しかし、花火大会の時はまさか本物の天狗に会えるとはな」

晃が空を見上げる。

「夏一番の思い出になったわ」

「な。迫力すごかったよな」

「あのリッカが緊張してたもんな」

ふ、と二人で笑い合う。


明日で夏休みが終わる。

こんなに楽しい夏休みは初めてだった。

終わってほしくない。

だけど。

この夏で少しだけ大人になれた気もしていた。

今まで、自分は人とは違うのだと思っていた。

みんなとは違う場所にいるのだと。

けれど。

線を引いていたのは、自分の方だったのかもしれない。

新学期になったら、自分から誰かに話しかけてみようか。

そんなことを考えている自分が、少しだけ可笑しかった。


「冬休みもまたここに泊まろうぜ!」

晃が勢いよく立ち上がる。

「鍋パとかいいよな!」

「いいな。コタツあったかな」

「また探検するか」

「お前、そればっかだな」

二人で笑い合う。



もしあの時。

リッカの異変にもっと早く気付けていたら。

もっとちゃんと、色々な話ができたのかもしれない。

今までのこととか。

これからのこととか。

でも、この時の俺はまだ知らなかった。

きっと夏が過ぎて。

秋が来て。

冬になっても。

寒いな、って言いながら三人でコタツに入って。

鍋を囲んで。

くだらないことで笑い合って。

そんな時間が、これからもずっと続いていくのだと思っていた。

そんな未来が待っていると、

信じていたんだ。