ミミミちゃん(意味が分かると怖い話)

「はーい、みんな手を止めてー。うしろから答案用紙を前に集めて」

ユミコ先生が、パンパンと手をたたいた。

よゆうでテストを終わらせて居眠りしていたサヤカは、んーん、と気持ちよく伸びをした。

今日のテストはこれで終わり。帰ったら何をして遊ぼうかなー。

どうせ明日の国語や英語なんかも、ぜんぶカンニングするだけだ。ムリして苦手な勉強なんかする必要ないし。

そんなことを考えながら、サヤカはリングの力でうしろの様子をうかがい、答案用紙が来るタイミングにあわせてふり返った。

だけど、うしろの席の岸本くんは用紙を渡してこなかった。

答案用紙を両手で胸の前に抱えこむようにして、石のように固まっている。

「どうしたの?」

サヤカが話しかけると、ガタンッ! と大きな音を立てて、岸本くんは椅子ごと身体をうしろに引いた。

岸本くんの顔はみるみる青くなり、くちびるはブルブルとふるえだし、見開いたひとみの中で黒目がカタカタと小刻みにゆれはじめた。

細い路地を歩いていたら、向こうから、包丁をにぎりしめた大男でもやってきたみたいな反応……。

テストが終わった解放感でガヤガヤとさわがしい教室に、そのただならぬ空気がじわじわと伝わっていく。

サヤカと岸本くんのまわりにいるクラスメイトたちが、こちらに目を向けたのがわかった。

「……サ、サヤカ?」

仲良しのカナが席から立ち上がり、ひきつった声を出した。

「何、そのぶつぶつ……?」