ミミミちゃん(意味が分かると怖い話)

はじめは、自分がわからない問題のときだけ、カンニングしようと思っていた。

けれど、ずっとリングをつけているから、積極的に見ようとしなくても、まわりが見えてしまう。

結果、1時間目の理科も、2時間目の数学も、勉強のできる優等生たちの答えを見比べてから、まるっと書き写してしまった。

自分で問題文をいちいち読んで、うーん、とうなって考えるよりずっとラクだし、まちがいもない。
この甘い誘惑に、サヤカは流されていった。

いまは3時間目、社会のテスト中。

もちろん、昨日言われたばかりのミミミちゃんの忠告を忘れてしまったわけではない。

「1日2時間以上使うと、つかれちゃうかも」と彼女はサヤカの身を案じていた。

だから当初の予定では、3時間目の社会だけは自分の力で受けようと思っていた。

まったく歯が立たない理科や数学とくらべたら、社会はまだマシで、実力でも70点を取れる可能性があったからだ。

だけど、1、2時間目で百目リングの圧倒的な力を体験して、できれば社会でも使いたくなってしまった。

サヤカは2時間目のテストが終わると、休み時間にトイレの個室に入って、自分の身体がつかれていないか確認してみた。

けれど、息も上がっていないし、心臓がバクバクうるさいわけでもない。
つかれなんて、まったく感じなかった。

サヤカはほとんどの教科を苦手としていたが、体育だけは得意だ。それに女子の中では、頭一つ抜けて背も高くて高校生に間違われたことだってある。

(小学生のミミミちゃんと中学生のわたしじゃ、そもそも体力が違うんだ。わたしなら、3時間くらいつけっぱなしでも大丈夫だ!)

そう判断したサヤカは、リングをつけたまま3時間目も受けることにした。

おかげで机の上に置かれたテスト用紙には、完ぺきな答えがびっしりと埋まっている。
体調もなんともないし、まわりの景色もクリアに見えたままだ。

はぁー、楽勝すぎる。

これなら全教科70点どころか、学年トップになっちゃうかも!

キーンコーン、カーンコーン……。

やがて、テスト終了のチャイムが静かだった教室に鳴り響いた。