友情vs恋愛~あなたは、どちらを優先しますか?~

「マジでさ、2組の涼真って本当にすました顔しててムカつく。話しかけても冷たいし、絶対私のこと見下してるって!」
放課後のファーストフード店で、麗未(れみ)がポテトをかじりながら激しく愚痴っている。
紗英美(さえみ)は「あはは、そ、そうかな……」と引きつった笑顔で相槌を打つのが精一杯だった。
麗未は紗英美の一番の親友だ。でも、その麗未には絶対に言えない秘密がある。
麗未が「冷たくて大嫌い」と毛嫌いしている涼真は、実は紗英美の、付き合って3ヶ月になる「彼氏」なのだ。
涼真は確かに無口で不愛想に見えるけれど、2人きりの時はとても優しくて、紗英美を誰よりも大切にしてくれる。
でも、麗未が涼真を敵視しているせいで、紗英美は付き合っていることをずっと言い出せずにいた。

次の日の放課後、麗未が委員会で居残ることになり、紗英美は1人で下校することになった。
校門を出てすぐ、人気のない裏路地に入ると、そこには壁に寄りかかってスマホを見ている涼真の姿があった。
「涼真、待っててくれたの?」
「おう。紗英美、今日麗未は?」
「今日は委員会だって。だから、一緒に帰れるよ」
涼真はふっと柔らかく微笑むと、紗英美の手を優しく握りしめた。
学校では目も合わせないようにしているから、こうして触れ合える時間はたまらなく愛おしい。
「……なぁ、いつまで麗未に隠しとくの?」
涼真が少し寂しそうな目で聞いてきた。
「ごめんね……。麗未、涼真のこと誤解してて、すごく苦手だって言ってるから、今さら付き合ってるなんて言えなくて……」
「俺は別に、誰に知られても構わないけど。お前がハラハラしてるの見るの、あんま好きじゃない」
涼真のストレートな言葉に、胸がキュンとする。
だけど、もし麗未にバレたら、「なんで隠してたの!?」と激怒され、大好きな親友を失ってしまうかもしれない。
その時、路地の向こうから「あれ?紗英美?」という声が聞こえた。
予定より早く委員会が終わった麗未が、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「っ……!」
紗英美はパニックになり、繋いでいた涼真の手を、思い切り振り払ってしまった。
驚いたような、そして少し傷ついたような涼真の目が、紗英美の胸をズキリと刺した。
「麗未に嫌われたくない」という友情と、「涼真を傷つけたくない」という恋愛。
手の中のぬくもりが消えた瞬間、紗英美は自分がついている嘘の重さに、息が詰まりそうになっていた。