友情vs恋愛~あなたは、どちらを優先しますか?~

「おい古波津(こなつ)、お前またそんな男みたいな笑い方して。一生彼氏できねーぞ」
「うるさいなー、諒に言われたくないし! だいたい、私を男扱いしてるのはどこのどいつよ」
古波津と諒は、高校に入ってからずっと一緒にいる「男ウケ悪い同盟」の相棒だ。
お互いに異性としての魅力はゼロ、気が合いつくす親友。そう、ついさっきまでは思っていた。

放課後、2人でいつものようにファミレスでテスト勉強をしていた時のこと。
ドリンクバーから戻ってきた古波津の目に、信じられない光景が飛び込んできた。
席に座る諒が、他校の可愛い女子生徒から連絡先を聞かれていたのだ。
「あの、よかったらLINE交換しませんか……?」
少し恥ずかしそうにスマホを差し出す女の子。
それに対して、諒はいつも古波津に見せるアホっぽい笑顔ではなく、少し照れたような、男らしい顔で「あ、うん。いいよ」と応じていた。
その瞬間、古波津の胸の奥が、ドクンと嫌な音を立てて跳ね上がった。
え……何これ。なんで胸がざわつくの?
女の子が去った後、何食わぬ顔で席に戻った古波津だったが、どうしてもいつもの調子が出ない。
モヤモヤとした黒い感情が胸を支配していく。
「どうした? 古波津、急に静かになって。お腹でも痛いんか?」
諒が心配そうに顔を覗き込んできた。
いつもなら「うるさい!」と小突くところなのに、急に至近距離に迫った諒の端正な顔立ちや、男らしい太い首筋、自分より一回り大きな体躯に、ドッと血の気が引くのが分かった。
「……なんでもない。ちょっと疲れたから、もう帰る」
荷物をまとめて逃げるように店を出た古波津。外はすっかり暗くなっていた。
背後から「おい、待てよ!」と諒が走って追いかけてきて、古波津の手首をギュッと掴んだ。
「離して!」
「離すかよ。あからさまに様子がおかしいだろ。何怒ってんだよ、言わなきゃ分かんねーよ!」
掴まれた手首から、諒の体温が熱いくらいに伝わってくる。
その力強さに、古波津は自分が「女の子」であることを嫌でも自覚させられた。
「……諒のバカ。もう知らない」
俯く古波津の顔は、街灯の光でも隠しきれないほど真っ赤に染まっていた。
ただの親友だったはずのアイツが、急に、世界で一番意識してしまう「男」に変わった瞬間だった。