このクズを誰にも渡したくない

私がそう言うと後ろからあの高身長の人が来た。

「俺だ」

低く、哀しみがある声が保健室に響く。

「佐々木・・・・・・」

渚が今にも泣き出しそうな顔で言う。

私はベットから立ち上がる。

「ねぇ」

奏斗がそう神妙そうな表情で口を開く。

「記憶・・・・・・喪失・・・・・・?」

その言葉で私達5人の間には静寂が流れた。

「・・・・・・染樹英翔。16歳。誕生日は11月1日。嫌いな動物は猫と犬。アレルギーだから。嫌いな食べ物はグラタン。誰に言っても驚かれる。ここまで言っても分かんないか・・・・・・」

綺麗に自己紹介してくれても尚私の脳からはなんの記憶は引っ張り出されなかった。

「えっ、グラタン嫌いな人っている!?」

渚の大袈裟なほどに驚く様子に私は少しだけ心が軽くなった。

さっきから張り詰めた空気が少し和んだようにも感じる。

「え、っと・・・・・・染樹くん・・・・・・?」

私が疑問形で聞くとその和んだ空気がまた・・・・・・さっき以上に張り詰めた。

「理も・・・・・・奏斗も渚も。私、別に昨日までの記憶はあるの・・・・・・でも・・・・・・記憶から染樹くんがすっぽり抜けてる・・・・・・」