那瑠「星那。」


突然名前を呼ばれ、星那は顔を上げる。


那瑠「さっきから何見てんの。」


星那「別に。」


短く返す。

綾人はその視線の先を辿り、小さく笑った。


綾人「綺羅じゃん。」


星那「違う。」


即答だった。

だけど否定したその直後、綺羅がふらりとよろめく。

星那は反射的に一歩踏み出していた。


綺羅「……っ。」


倒れることはなかった。

すぐに体勢を立て直す。

それでも星那の足は止まらない。

綺羅の目の前まで来ると、小さく息を吐いた。


星那「まだ無理。」


綺羅「……平気。」


星那「昨日もそう言ってた。」


静かな声だった。

責めるでもなく、怒るでもない。

ただ、本当に心配しているだけだった。