しばらくして星那がぽつりと呟く。


星那「昨日。」


綺羅はカップから視線を上げる。


星那「ありがとう。」


綺羅「……え?」


思わず聞き返した。


星那「真尋を助けてくれた。」


綺羅は少し困ったように笑う。


綺羅「助けたつもり、ないよ。身体がかってに動いただけ」


それは本心だった。

自分でも、どうしてあんなことをしたのか分からない。

星那は静かに綺羅を見つめる。


星那「それでも。たすけた」


短い言葉だった。

だけど、その一言が綺羅の胸へ静かに落ちていく。

誰かに責められると思っていた。

怖がられると思っていた。

なのに星那は違った。

ただ真っ直ぐ、「ありがとう」と伝えてくれた。

綺羅は小さく俯き、マグカップを両手で包み込む。

ほんの少しだけ。

本当にほんの少しだけ。

星那の隣が、心地いいと思ってしまった。