綺羅はもう一度出口へ目を向ける。


綺羅「もういいでしょ?帰る」


そう言って歩き出そうとした、その時。


真央「駄目だ。」


綺羅「……。」


真央「今日一日はここにいろ。」


綺羅「嫌。」


即答だった。


那瑠「即答だ。」


綾人が思わず笑う。

真央も苦笑しながら綺羅を見つめる。


真央「帰して、また一人で抱え込む気か。」


その一言に、綺羅の表情が僅かに揺れた。

図星だった。

真央はその変化を見逃さない。


真央「綺羅。」


静かに名前を呼ぶ。


真央「お前は昔から、一人で全部背負おうとする。」


綺羅は何も答えなかった。

ただ俯き、ぎゅっと拳を握り締める。

その姿を見た紫月は、静かに目を細めた。

――やっぱり、この二人には俺達の知らない過去がある。

その確信だけが、胸の中で少しずつ大きくなっていった。