その一言に、倉庫の空気が静まり返る。


那瑠「琉羽?」


真尋「あぁ。」


真尋はソファで眠る綺羅へ視線を向けた。


真尋「俺を抱き締めながら、何度もそう呼んでた。」


誰も聞いた事のない名前だった。

紫月は腕を組んだまま黙り込む。

星那も静かに綺羅を見つめていた。

その時だった。


綺羅「……っ。」


眠っていた綺羅の眉が苦しそうに歪む。

小さく首を振り、何かから逃げるようにシーツを握り締める。


綺羅「や……。」


震えた声が漏れる。


綺羅「嫌……。」


その一言に真尋が思わず振り返る。


綺羅「嫌ぁっ!!」


勢いよく目を開けた。

荒い呼吸に焦点の合わない瞳。

そこに映っているのは倉庫じゃない。

綺羅が見ているのは、まだあの日の景色だった。


「琉羽!!」


叫びながら飛び起きる。

ガシャンッ!!

目の前のテーブルを勢いよく弾き飛ばし、置いてあったコップや灰皿が床へ散らばる。


「嫌……!いかないで!お願いだからっ!!」


涙を流しながら必死にもがく。

夢なのか。現実なのか。

綺羅自身にももう分からなくなっていた。

怯えたまま後ずさり、震えながら何度も首を振っていた。