学校裏へ停めてあった黒いワゴン車へ乗り込む。

運転席では黒服姿の男が静かに待っていた。

橘(たちばな)。

黒崎真央の側近であり、煌月の送迎や裏の仕事を任されている男だ。


橘「お疲れ様です。」


紫月は短く頷くと後部座席へ腰を下ろした。

綾人は助手席へ乗り込み、真尋と那瑠も後部座席へ。

最後に星那が綺羅を抱いたまま車へ乗り込む。

暴れる様子はなく、綺羅は星那の腕の中で静かに眠っていた。

思ったより軽い。

さっきまで何十人もの相手を倒していたとは思えないほど、小さくて儚い。

星那はそっと自分の膝へ綺羅を寝かせる。

橘はバックミラー越しに一度だけ綺羅へ視線を向けた。

だが、何も聞かなかった。

理由を尋ねる事も。

驚く事も。

ただ静かにエンジンを掛け、車を走らせる。

重たい沈黙だけが車内を包んでいた。

最初に口を開いたのは那瑠だった。


那瑠「……何者なんだ、あの子。」


誰も答えない。


那瑠「普通じゃないだろ。」


綾人「あんな動き見た事ねぇ。」


真尋は窓の外を見つめたまま、小さく息を吐いた。