男は鉄パイプを引き抜こうと力を込める。
だけど、びくともしない。
男「な、なんだこいつ……!」
綺羅は俯いたまま、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳に映っていたのは、目の前の男じゃない。
もっと遠く。
もっと昔。
あの日の景色だった。
綺羅「……触るな。」
静かな声だった。
だけど、その一言だけで空気が凍り付く。
次の瞬間。
綺羅は鉄パイプを軽く捻る。
ギシッ――。
金属が悲鳴を上げるような音を立て、男の手から鉄パイプが離れた。
男「は……?」
驚く暇も与えない。
綺羅は一歩踏み込むと、その男の腹へ拳を叩き込む。
鈍い音が響く。
男の身体が数メートル先まで吹き飛び、そのまま地面を転がった。
周囲が静まり返る。
那瑠「……は?」
綾人「嘘だろ……。」
真尋も痛みを忘れたように綺羅を見つめる。
誰も動けない。
目の前の少女が、本当にさっきまで泣いていた転校生と同じ人物なのか分からなかった。



