真尋「俺、生きてるから。」

困ったように笑う声。

その一言が耳へ届いた瞬間だった。

――生きてる。

その言葉が頭の中で何度も反響する。

生きてる。

今回は生きてる。

あの日は違った。

腕の中から温もりが消えていった。

どれだけ名前を呼んでも返事はなくて。

どれだけ泣いても目を開けてくれなくて。


「綺羅……」


弱々しく笑った、あの日の琉羽の顔が脳裏に浮かぶ。

違う。もうやめて。

思い出したくない。


綺羅「……っ」


抱き締める腕に力が入る。

離したくない。

また失うのが怖い。

もう二度と、大切な人が目の前で傷付く姿なんて見たくない。

その時だった。


「まだ終わってねぇぞ!!」


怒鳴り声が響く。

真尋の背後で、倒れていた男がゆっくりと立ち上がる。

手にはさっきの鉄パイプ。

男は真尋を睨みつけると、今度は迷いなく振り上げた。

真尋は綺羅を庇うように動こうとする。


真尋「危な――」


最後まで言わせなかった。

ガシッ。

鉄パイプは空中で止まる。

綺羅の右手が、それを素手で掴んでいた。


男「……は?」


その場にいた全員が動きを止める。

鉄パイプを握る綺羅の手から血が流れる。

それでも痛がる様子はない。

俯いたまま、小さく呟いた。


綺羅「……邪魔。」


低く、冷たい声だった。

さっきまで泣いていた少女と同じ声には、とても聞こえなかった。