周りでは野次馬になった生徒達が息を呑んでいる。
「すげぇ……」
「やっぱ煌月だ。」
そんな声が聞こえてくる。
私はその輪の一番後ろに立ったまま動けなかった。
昔なら。
きっと私はあの中にいた。
琉羽と背中を預け合いながら、何も考えず前だけを見ていた。
でも今は違う。
私はもう夜桜月華じゃない。
普通の高校生。
そう決めた。
だから踏み出さない。
踏み出しちゃいけない。
何度も何度も自分に言い聞かせる。
その時だった。
一人の男が、人混みに紛れるように校舎の陰へ回り込んでいく姿が目に入る。
誰も気付いていない。
紫月達も。
野次馬達も。
その男は手に握った鉄パイプをゆっくり持ち上げながら、真尋の背後へ近付いていく。
私は息を呑んだ。
駄目。
そう思った瞬間には、身体が半歩だけ前へ出ていた。



