午前中の授業はあっという間に終わった。

チャイムが鳴ると同時に教室がまた騒がしくなる。


翔「綺羅!」


綺羅「また?」


翔「『また?』はひどくね?」


笑いながら立ち上がる翔に、思わず小さく笑ってしまう。

昨日ならこんな風に笑う余裕なんてなかった。

少しだけ。

本当に少しだけだけど、この教室にも慣れてきたのかもしれない。


翔「昼飯行こうぜ」


綺羅「ごめん、一人で食べる」


翔「知ってた」


諦めるの早いな。

そう思っていると、翔は机に頬杖をつきながらこちらを見た。


翔「でもさ」


綺羅「なに?」


翔「綺羅って、一人が好きなの?」


その質問に返事が詰まる。

好き?そういう訳じゃない。

一人の方が楽なだけ。

誰かと近付かなければ、失う事もない。

そんな考えが一瞬頭を過ったけど、口には出さなかった。


綺羅「……慣れてるだけ」


小さくそう答えると、翔はそれ以上聞いてこなかった。

その気遣いが少しだけありがたかった。