紫月達の姿が見えなくなると、教室の空気が一気に緩んだ。

さっきまで静かだった教室が、何事もなかったように騒がしくなる。


「やっぱオーラあるよな」


「目合った?」


「無理無理、怖ぇって」


そんな声があちこちから聞こえてきた。

私はその様子をぼんやり眺める。

同じ学校の生徒なのに、まるで別の世界の人達みたいだった。


翔「毎日あんな感じ」


綺羅「人気なんだね」


私がそう言うと、翔は少し困ったように笑う。


翔「人気っていうか……怖がられてる方が近いかな」


その言葉にもう一度廊下を見る。

確かに誰一人として近付こうとはしていなかった。

昨日も今日も。

みんな道を空けて、遠くから見ているだけ。

翔だけが違う。

星那にも普通に話しかけるし、笑いながら肩を叩く事もある。


綺羅「翔は?」


翔「ん?」


綺羅「怖くないの?」


翔は少しだけ笑って肩を竦めた。


翔「最初は怖かったよ。でも話してみたら普通だった」


普通。

その言葉が少しだけ引っ掛かった。

私にはまだそうは思えない。

というより、思うほど関わっていない。

だから分からなかった。