始業のチャイムが鳴る少し前だった。

教室の空気がふっと変わる。

騒がしかった教室が、一瞬だけ静かになった。

何事かと思い廊下へ目を向ける。

昨日校門で見掛けた五人が並んで歩いていた。

先頭を歩く朝会った男は、周囲の視線なんて気にも留めていない。

その隣では短髪の男子が楽しそうに笑い、後ろではもう一人が面倒そうに相槌を打っている。

一番後ろ。

星那は欠伸をしながら歩いていた。


那瑠「星那、今日こそ授業ちゃんと受けろよ」


星那「頑張る」


綾人「毎日聞いてる」


真尋「その頑張る、一回も成功した事ないだろ」


四人の笑い声が廊下に響く。

星那は反論するでもなく、小さく笑って肩を竦めた。

そのやり取りを見て、少しだけ意外だった。

昨日は何となく一人でいる人なのかと思っていた。

だけど違う。

ちゃんと笑うし、ちゃんと仲間もいる。

その時、不意に一番前を歩いていた男が顔を上げた。

一瞬だけ目が合う。

昨日と同じ、静かな視線。

何かを言う訳でもない。

表情が変わる訳でもない。

それでも私は、昨日より少しだけその視線を意識してしまった。