二人で校舎へ向かって歩いていると、不意に周囲がざわつき始めた。


「来た」


「朝からかよ」


そんな小さな声があちこちから聞こえる。

私は何気なく前を見る。

昇降口へ向かって歩いてくる五人の男子生徒。

昨日、校門で見掛けた顔だった。

綺羅は思わず視線を逸らそうとする。

関わらない。

それが一番だ。

そう思った、その時。

ぼん。

軽い衝撃が肩に当たった。

誰かとぶつかったらしい。


「あ、ごめ──」


反射的に謝ろうとして顔を上げる。

目の前にいたのは。

昨日、屋上で会った星那だった。


星那「……おはよ」


眠そうな声。

ぶつかった本人とは思えないくらいのんびりしている。


綺羅「……おはよう」


それだけ言うと、星那は「ん」と短く返事をして、そのまま何事もなかったように歩いて行った。


翔「えっ?」


隣で翔が目を丸くしている。


綺羅「何?」


翔「いや……星那が自分から挨拶するとか初めて見たかも」


私は歩いていく後ろ姿を見つめる。

本人はそんな事、何とも思っていないんだろう。

でも。

ほんの少しだけ。

“変な人”という印象が、昨日とは違う形で頭に残った。