部屋へ入ると、星那は慣れた様子で靴を揃え、そのままソファへ腰を下ろした。

その姿を見て、綺羅は思わず笑ってしまう。

もう「お邪魔します」と言わなくなった。

それが嫌なわけじゃない。

むしろ、その変化が嬉しかった。

いつの間にか、この部屋は星那にとっても「帰ってくる場所」になっている。

そう思うだけで、胸がじんわり温かくなる。

キッチンへ向かおうとした、その時。

服の裾がちょん、と引かれた。

振り返る。……まただ。

その仕草だけで、何を言いたいのか分かってしまう自分がいる。


綺羅「どうしたの?」


星那「……。」


何も言わない。

でも、その目だけが答えを伝えていた。


綺羅「ぎゅー?」


星那は少し照れながら頷く。

綺羅は思わず吹き出した。


綺羅「今日は甘えたい日?」


星那「……毎日。」


……もう。

そんな顔で言わないで。可愛すぎるじゃん。

綺羅は何も言わず、星那を優しく抱きしめた。

その瞬間、小さく聞こえた「ふぅ……」という安心した吐息に、胸がぎゅっと締め付けられた。

“この人、本当に私の腕の中で安心するんだ。”

その事実が、どうしようもなく嬉しかった。