ぬいぐるみを抱えたまま歩いていると、星那がふと立ち止まった。
どうしたんだろう。
そう思って振り返ると、星那は少しだけ困ったような顔をしている。
あ、この顔。何か言いたい時の顔だ。
でも、自分から言うのは苦手。
だから少しだけ待ってみる。
綺羅「どうしたの?」
星那は少しだけ視線を逸らしたあと、小さく口を開いた。
星那「……一個。」
綺羅「ん?」
星那「お願い。」
お願い?何だろう。
綺羅は首を傾げる。
綺羅「いいよ。何?」
星那は少しだけ照れながら、小さく呟いた。
星那「……手。」
綺羅は思わず笑ってしまう。
さっきまでぬいぐるみを抱えていたから、自然と手を離していた。
それが寂しかったんだ。
そんなことまで可愛いなんて反則だ。
綺羅はぬいぐるみを片腕へ抱え直すと、自分から星那の手を握った。
指先が重なるその瞬間、星那の表情がふわっと柔らかくなった。
“そんなに安心するんだ。”
その笑顔を見るたび、胸の奥がじんわり温かくなる。



