帰る時間になっても、星那はなかなか立ち上がろうとしなかった。

ソファへ座ったまま、綺羅の手をそっと握る。

その表情を見ているだけで、何を考えているのか分かってしまう。

帰りたくない。その気持ちが、痛いほど伝わってきた。

綺羅は小さく笑い、星那の前へしゃがみ込む。


綺羅「そんな顔しないの。」


星那「……まだ一緒にいたい。」


綺羅「私も。」


その一言だけで、星那の表情が少しだけ和らぐ。

綺羅は握られた手を優しく握り返した。


綺羅「またおいで。この部屋、いつでも星那を待ってるから。」


星那は静かに綺羅を見つめる。

その言葉が、どれほど嬉しかったのか。

言葉にしなくても、その瞳が全部教えてくれていた。


星那「……うん。帰ってくる。」


綺羅は優しく微笑んだ。


綺羅「うん。おかえりって言うね。」