その返事が妙に引っ掛かった。
真央は昔から分かりやすい。
何かを隠している時は、決まって話を逸らそうとする。
綺羅「絶対何かあるでしょ」
真央「ないない」
綺羅「ある」
真央「疑り深いな」
電話越しに笑う声が聞こえる。昔から変わらない。
適当で、面倒見が良くて、肝心な事はなかなか話さない。
綺羅「別にいいけど」
真央「そうかよ」
綺羅「私、煌月に関わる気ないし」
そう言った瞬間、真央が少し黙った。
私は窓の外へ視線を向ける。夕陽はほとんど沈みかけていた。
綺羅「もう戻るつもりないから」
その言葉は真央に向けたものでもあり、自分自身に言い聞かせるものでもあった。
夜桜月華は終わった。
琉羽がいない時点で、もうあれは存在しない。
だから私は普通の生活を選んだ。
もう誰とも深く関わらないために。
真央「……まぁ、お前が決めた事ならな」
その声は否定も肯定もしなかった。
だから少しだけ胸が痛んだ。



