しばらく歩くと、綺羅が住むマンションが見えてきた。

綺羅は立ち止まり、小さく笑う。


綺羅「着いちゃった。」


星那も足を止める。

いつもなら。

「また明日。」そう言って帰るだけだった。

でも今日は違う。

恋人になって初めての別れ際。

何だか少しだけ寂しい。


綺羅「じゃあ……。」


そう言いかけた時だった。

星那が繋いだ手を少しだけ引く。


綺羅「ん?」


星那は少しだけ俯く。


星那「……もう少し。」


綺羅は思わず笑ってしまう。


綺羅「帰りたくないの?」


星那は照れたように小さく頷いた。

その姿があまりにも可愛くて、綺羅は笑いを堪えられなかった。


綺羅「そんな顔されたら困る。帰しにくくなるじゃん。」


星那「……困って。」


綺羅「え?」


星那「困ってくれたら嬉しい。」


綺羅は胸を押さえた。


綺羅「もう……今日だけで何回ドキドキさせるの。」