その時、テーブルの上に置いていたスマホが震えた。

画面を見る。

表示された名前に小さく息を吐いた。

黒崎真央。

昔から世話になっている人。

そして今の私を無理やり学校へ送り込んだ張本人だ。

少し迷った後、通話ボタンを押す。


綺羅「もしもし」


真央『学校どうだった』


開口一番それだった。

私は思わず苦笑する。


綺羅「普通」


真央『お前の普通は信用出来ねぇんだよ』


即答だった。

相変わらず失礼な人だ。


綺羅「何それ」


真央『事実だろ』


電話の向こうで笑い声が聞こえる。

昔から変わらない。

必要以上に優しくする訳じゃない。でも放ってもおかない。

その距離感が心地良かった。


真央『で、友達出来たか』


綺羅「出来てない」


真央『だろうな』


また即答だった。なんなんだろう本当に。

私が呆れていると、真央はひとしきり笑った後で少しだけ声の調子を変えた。


真央『煌月には会ったか?』


その瞬間、放課後の光景が頭を過る。

校門前に集まっていた人影。

朝会った男。

そして星那。

私は少しだけ黙り込みながら窓の外へ視線を向けた。


綺羅「会ったよ」


真央『そうか』


綺羅「それがどうかしたの?」


真央はすぐには答えなかった。

まるで何かを考えているみたいに。

そして数秒後、静かな声で言った。


真央『いや。別に』


その返事が妙に引っ掛かった。