玄関の扉を開けると、静かな空気が私を迎えた。

学校にいた時とは違う静けさだった。

騒がしいのは苦手だ。

だけど、静かすぎるのも好きじゃない。

人の声が聞こえない部屋は、嫌でも一人だという事を思い知らされるから。

私は靴を脱ぎながら小さく息を吐いた。

今日一日を思い返す。

転校初日。

普通なら緊張して眠れないくらい大変な一日だったのかもしれない。

だけど私にとってはそうでもなかった。

人に囲まれる事も注目される事ももっと酷いものを知っている。

だから疲れたのは別の理由だった。

鞄をソファへ置き、そのままリビングへ向かう。

窓から差し込む夕陽が床を赤く染めていた。

もうそんな時間か。

制服のままソファへ腰を下ろす。

ふと視線を向けた先に、一枚の写真立てがあった。

見慣れた写真。

何度も見た写真。

それなのに目に入った瞬間、胸の奥が少しだけ痛んだ。

写真の中で笑っているのは私と琉羽だった。

今より少し幼い顔。

肩を組んで笑う私達は、何も怖いものなんてないと思っていた。

ずっと隣にいるものだと思っていたし失う日が来るなんて考えもしなかった。

私はゆっくりと目を伏せる。

会いたい。琉羽会いたいよ。

そんな事を思う資格なんてないのに。

今でも時々思ってしまう。

もしあの日私があそこにいなかったら。

もし違う選択をしていたら。

琉羽は今も生きていたんじゃないかって。