病室には誰もいない。

静かな時間だけが流れていく。

星那は綺羅の寝顔を見つめながら、小さく笑った。


星那「覚えてる?」


もちろん返事はない。

それでも星那は話し続ける。


星那「初めて屋上で膝貸してって言った時変な顔してた。」


思い出すだけで少し笑ってしまう。

『しょうがないな。』

そう言いながら膝を貸してくれた綺羅。

『風邪ひくよ。』

そう言って毛布を掛けてくれた綺羅。

『おはよう。』

眠って起きるたびに笑ってくれた綺羅。

一つひとつの思い出が、胸の中へ浮かんでは消えていく。


星那「……全部。綺羅だった。」


安心できた場所も。

眠れた理由も。

笑えた理由も。

全部綺羅だった。

星那は自分の胸へそっと手を当てる。

ドクンドクン。

鼓動が少し速くなる。

今まで感じたことのない感覚だった。