病室を出た真尋達は、廊下で小さく笑い合っていた。


那瑠「聞いたか?」


綾人「“まだ”だって。」


真尋「無意識で言ってるのが一番怖ぇ。」


三人が笑う中、紫月だけは静かに病室の扉を見つめていた。


紫月「……気付いたんだろ。」


真尋「何が?」


紫月は小さく息を吐く。


紫月「綺羅を失いたくないって気持ちに。」


その一言で、三人も静かになる。

病室では星那が椅子へ座ったまま、綺羅の手を握り続けていた。

眠そうに何度も目を擦る。

それでも眠らない。

いや、眠れない。

安心できる場所は、今も目の前にいる。

でもその場所は目を覚ましてくれない。

星那は綺羅の手を少しだけ強く握り、小さく呟いた。


星那「……早く起きて。また、一緒に帰ろう。」


静かな病室に、その願いだけが優しく溶けていった。