やっぱり色々おかしい。

そんな事を考えているうちに授業は終わった。

終礼の挨拶が終わると同時に教室が騒がしくなる。

帰宅する者、友達と話し始める者、部活へ向かう者。

みんなそれぞれ動き出していた。

私は鞄を持つ。一秒でも早く帰りたかった。

久しぶりの学校生活は思っていた以上に疲れる。

人と関わる事に慣れていないんだろう。

いや、慣れたくないのかもしれない。


翔「綺羅!」


案の定呼び止められた。


綺羅「なに」


翔「一緒帰ろうぜ」


綺羅「帰らない」


翔「帰るだろ」


綺羅「一緒には帰らない」


翔は数秒固まった後、大袈裟に肩を落とした。


翔「ひどくない?」


綺羅「普通」


翔「絶対普通じゃない」


そう言いながらも翔は笑っていた。

不思議な人だ。普通ならとっくに嫌になって離れていくと思うのに。

私は軽く手を振ると教室を出た。

廊下を歩き、階段を降りる。ようやく静かになれる。

そう思っていたのに校門が見えた瞬間、妙な違和感を覚えた。

人が集まっている。

帰ろうとしていた生徒達まで立ち止まって何かを見ていた。

なんだろう?少しだけ足を止める。

その時だった。

「煌月だ」

誰かがそう呟いた。

その一言で周囲がざわつく。

自然と人の視線が一ヶ所へ向いた。

私もつられてそちらを見る。

校門の前に数人の男子生徒が立っていた。

その中心にいたのは、朝会った男。

理事長室まで案内してくれた人。

相変わらず冷たい印象の目をしている。

周りにも数人の男子生徒がいた。

みんな目立つ。

ただ立っているだけなのに自然と視線を集めてしまうような雰囲気があった。

その中には見覚えのある顔もあった。

九条星那。

屋上で会った変な人。

相変わらず眠そうな顔で欠伸をしている。本当にやる気があるんだろうか。

そんな事を考えていると、周囲から小さな声が聞こえてきた。

「煌月だ」

「やっぱり紫月先輩かっこいい」

「目合わせたら終わるって」

みんな好き勝手な事を言っている。

どうやらかなり有名らしい。

でも、私には関係ない。

関わるつもりもないし、知るつもりもない。

私はもう裏の世界には戻らない。

そう決めたんだから。そのまま校門へ向かう。

だけど、すれ違う瞬間だった。

不意に視線を感じる。

顔を上げると、朝会った男と目が合った。

朝と同じ、まるで何かを探るような視線。

私は小さく眉をひそめた。

なんなんだろう。初対面のはずなのに。