やっぱり変な人だ。そんな事を考えているうちに授業が始まった。

久しぶりの教室に久しぶりの授業。

黒板に書かれる文字を見ながら少しだけ懐かしくなる。

昔はこんな毎日が当たり前だったはずなのに気付けば随分遠いものになっていた。


「雨宮」


突然名前を呼ばれる。

顔を上げると先生と目が合った。

しまった。少し考え事をしていた。


先生「この問題分かるか?」


黒板を見ると数学だった。まぁ簡単な問題だ。


綺羅「はい」


立ち上がり答える。

すると先生は満足そうに頷いた。


先生「正解」


その一言で席に座る。

ただそれだけ。それだけのはずだった。

なのに。


翔「え?」


前の席から変な声が聞こえた。


綺羅「何?」


翔「今の分かったの?」


綺羅「分かるでしょ」


翔「いや分かんねぇよ」


そんなに難しかっただろうか。

もう1度黒板を見るけどやっぱり普通の問題にしか見えない。

すると周りの生徒達までざわつき始めた。


「マジか」

「俺全然分からんかった」

「頭いい系?」


なんでそんな話になるんだろう?

別に特別な事をしたつもりはないし少しだけ居心地が悪かった。


翔「綺羅って勉強できるんだな」


綺羅「普通だと思うけど」


そう言うと翔は呆れたように笑った。


翔「普通の基準おかしくない?」


そんな事を言われても困る。私には本当に普通だった。

ふと隣を見ると星那は相変わらず寝ている。

授業開始からずっと微動だにしていない。

ある意味すごいな。

先生も何も言わないし慣れているんだろうか?

そんな事を考えていると。


先生「九条」


教室が少し静かになった。


先生「起きろ」


ついに注意された。

まぁ当然だと思う。

だけど。


星那「……」


起きない。

全く起きない。


先生「九条」


もう一度呼ばれる。

それでも起きない。

教室中が見守る中星那は気持ち良さそうに眠っていた。

すごい。ここまでくると逆に尊敬する。

先生は大きくため息を吐いた。

そして。


先生「もういい」


諦めた。まさかの諦めだった。


綺羅「……」


翔「……」


思わず翔と顔を見合わせる。

翔は慣れたように肩をすくめた。


翔「いつもの事」


どうやら本当にいつもの事らしい。

月ヶ瀬学園。

やっぱり色々おかしい。