教室へ戻ると、翔が真っ先にこちらへ気付いた。
翔「おかえり」
綺羅「ただいま」
反射的に返してから少しだけ後悔する。
別に帰ってきた訳じゃない。なんとなくそう返しただけだ。
翔「どこ行ってたんだ?」
綺羅「屋上」
その瞬間、翔の動きが止まった。
なんで?そんな顔をされると逆に気になる。
翔「屋上?」
綺羅「うん」
翔「一人で?」
綺羅「最初は」
私がそう答えると、翔は何とも言えない顔をした。
綺羅「何?」
翔「いや……別に」
全然別にじゃなさそうなんだけど。
翔はしばらく迷った後、小さくため息を吐いた。
翔「星那いた?」
綺羅「いた」
翔「だよなぁ……」
なんなんだろう。さっきから反応が大袈裟だ。
綺羅「何か問題あるの?」
翔「いや、問題っていうか」
翔は言葉を探すように頭を掻いた。
翔「屋上って煌月のたまり場なんだよ」
綺羅「そう」
翔「そうって……」
また変な顔をされた。
そんな事言われても困る。知らなかったんだから仕方ない。
それに知っていたとしても行ったと思う。あの場所は静かだったし教室よりずっと居心地が良かった。
翔「普通怖がるだろ」
綺羅「なんで?」
翔「なんでって……」
翔は本気で不思議そうな顔をした。だけど私の方が不思議だった。
怖がる理由が分からない。確かに関わりたくはないけど怖いとは思わなかった。
翔「まぁ綺羅変わってるしな」
綺羅「失礼」
翔「褒めてる」
絶対褒めてない。そう思った時だった。
後ろから椅子を引く音が聞こえて振り返るとさっきまで屋上にいた星那が教室へ入ってきていた。
あれ?サボるんじゃなかったの?
そんな私の視線に気付いたのか、星那は一瞬だけこちらを見た。
星那「……」
何も言わない。
そのまま自分の席へ向かい、机に突っ伏した。
そして数秒後には寝息が聞こえてくる。
早すぎるでしょ。
綺羅「本当に寝るんだ」
思わず呟くと。
翔「だから言っただろ?」
翔が呆れたように笑った。
私も少しだけ笑ってしまった。
やっぱり変な人だ。



