私は思わず星那を見た。だけど本人は至って真面目な顔をしている。どうやら冗談ではないらしい。
綺羅「戻らないの?」
そう聞くと、星那は眠そうに目を擦った。
星那「だるい」
即答だったし理由にもなっていない。
綺羅「授業でしょ」
星那「授業だね」
綺羅「なら戻ればいいのに」
そう言うと、星那は少しだけ首を傾げた。
星那「雨宮って真面目なんだ」
なんだろう。その言い方は。
まるで真面目なのが珍しいみたいじゃないか。
綺羅「普通だと思うけど」
少なくとも授業をサボろうとは思わない。昔ならともかく、今は普通の高校生になると決めたんだから。
その言葉に星那は「ふーん」とだけ返した。本当に興味なさそうだ。
教室で初めて見た時から思っていたけど、この人は何に興味があるんだろう。
寝る事以外。
そんな事を考えていると、再び予鈴が鳴った。
今度こそ戻らないとまずい。
綺羅「じゃあ」
そう言って屋上の扉へ向かう。
すると後ろから欠伸混じりの声が聞こえた。
星那「俺の事、星那でいいよ」
思わず振り返る。
星那はフェンスにもたれたまま空を見上げていた。こちらを見てもいない。
なのに何故か会話だけは続いている。
変な人だな本当に。
綺羅「じゃあ私も綺羅でいい」
そう返すと、星那は小さく「うん」とだけ答えた。
それだけ。
それだけなのに、なんだか不思議な会話だった。
友達になった訳でもない。
仲良くなった訳でもない。
きっと明日にはほとんど話さないだろうし、お互い特別な存在になる事もない。
そう思うのに。
星那「真面目だね」
また同じ事を言われた。
意味が分からない。
私は小さく眉をひそめる。
だけど聞き返すほど興味もなかった。
そのまま屋上の扉を開ける。教室へ戻るために。
ただ、扉が閉まる直前。もう一度だけ振り返ると、星那はさっきと同じように空を見上げていた。
やっぱり変な人。
それが今の正直な感想だった。



