綺羅はゆっくり立ち上がった。

星那も異変に気付き、綺羅を見上げる。

綺羅の顔から笑顔は消えていた。


綺羅「……分かった。」


短く返事をすると、電話を切る。

部屋には重たい沈黙が流れた。

真尋達も異変を感じ、再び個室へ入ってくる。


真尋「綺羅?」


綺羅はゆっくり全員を見渡した。

そして静かに口を開く。


綺羅「黒焔が動く。明日の夜。」


その一言で部屋の空気が張り詰める。


綾人「……確かな情報か。」


綺羅は静かに頷く。


綺羅「皇蓮司も来る。間違いない。」


真尋は綺羅の表情を見つめ、小さく息を吐いた。


真尋「いよいよか。」


綺羅は拳を強く握り締める。

3年間。

追い続けた仇。

ようやく、この時が来る。

その横で、星那は静かに綺羅の手を握った。

何も言わない。

ただ、「一人じゃない」と伝えるように。

綺羅は驚いたように星那を見る。

星那は眠そうな目のまま、小さく微笑んだ。


星那「……帰ってこよう。」


その一言に、綺羅の瞳が揺れる。

復讐しか見えていなかった心へ、初めて別の想いが生まれた。

――守りたい。

そう思った相手が、目の前にいた。