星那は一定の距離を保ったまま、黒焔の下っ端達の後を歩いていた。

相手に気付かれないよう、自然に。

眠そうに見えるその表情とは裏腹に、瞳だけは真っ直ぐ前を捉えている。


黒焔の下っ端A「今日は総長機嫌悪かったな。」


黒焔の下っ端B「あの女の話じゃねぇの?」


黒焔の下っ端A「月華か?まだ探してんだろ。」


その名前に、星那の足が止まりそうになる。

(月華……。)

綺羅が暴れていた日。

黒焔の男達が確かにそう呼んでいた。

胸の奥がざわつく。

下っ端達は笑いながら裏路地を抜け、人気のない工場地帯へ入っていく。

星那は物陰へ隠れながら後を追った。

そして古びた廃工場の前で、男達が門の中へ入っていく。

ギィ……。

重い鉄の門が閉まる。

星那は門から少し離れた場所で立ち止まった。

その時だった。ビルの屋上から、一人の人影が降りてくる。

黒いパーカー。小柄な背中。

見間違えるはずがなかった。


星那「……綺羅。」