綺羅は五日目も同じ場所にいた。
朝から夕方まで、黒焔のアジトが見えるビルの屋上。
吹き抜ける風も、照り付ける日差しも気にならない。
双眼鏡を覗き込み、出入りする人間を一人ひとり目で追う。
メモ帳には少しずつ文字が増えていく。
『見張り 二人』
『門番交代 四時間』
『幹部 三人』
『皇蓮司 未確認』
綺羅「……まだ。」
思わず唇を噛む。
ここまで張り付いているのに、皇蓮司だけは一度も姿を見せない。
苛立ちは募る。
それでも感情で動くほど、綺羅は未熟ではなかった。
琉羽を失ったあの日。
あの後悔だけは、もう二度と味わいたくない。
綺羅「今度は……絶対に仕留める。」
静かに呟くと、再び双眼鏡を構えた。
その瞳は、獲物を狙うように鋭く黒焔のアジトを見つめていた。



