翌朝。

綺羅は制服ではなく、黒いパーカーに袖を通した。

机の上には昨夜遅くまで書き込んだメモ帳が開かれている。

『見張り 二人』

『正門 一ヶ所』

『裏口 未確認』

『皇蓮司 未確認』

ページをめくるたび、文字は少しずつ増えていく。

それでも、綺羅は首を横に振った。


綺羅「……まだ足りない。」


琉羽の命を奪った相手だ。

勢いだけで飛び込めば、同じ結末になる。

そんなことだけは絶対に繰り返したくなかった。

綺羅はメモ帳をバッグへしまうと、スマホを手に取る。

画面には通知がいくつも並んでいた。

真尋からのメッセージ。

綾人からの着信。

那瑠からの「生きてるか?」という短い一文。

指が返信ボタンの上で止まる。

――ごめん。

心の中で謝り、スマホの電源を落とした。

今は誰にも止められたくない。

黒焔のことだけを考えたい。

そう決めた綺羅は静かに家を出た。

向かう先は学校ではない。

黒焔のアジトが見渡せる、あのビルだった。