翌日。
放課後を知らせるチャイムが校舎に響く。
「また倉庫でな!」
真尋達の声を背中に聞きながら、綺羅は一人、校門を出た。
今日は少し寄り道をするつもりだった。
特に理由はない。
ただ、久しぶりに街を歩いてみたくなっただけ。
夕暮れの商店街は仕事帰りの人で賑わっている。
学生達の笑い声。店先から漂う揚げ物の匂い。何気ない日常の景色だった。
その時、綺羅の足がぴたりと止まる。
(……あれ。)
視線の先。
信号待ちをしている男が二人。
黒いパーカーに、見覚えのある銀色のピアス。
そのうち一人の横顔を見た瞬間、綺羅の瞳が鋭く細められた。
(あいつ……。)
数日前。
自分に絡み、返り討ちにした男だった。
あの時、幹部の一人が口にした名前。
――黒焔。
綺羅は反射的に物陰へ身を隠す。
男達は周囲を警戒することもなく歩き始めた。
綺羅はゆっくり息を吐く。
(……見つけた。)
胸の奥で、静かに何かが燃え始める。
琉羽の仇へ繋がる、たった一本の糸。
綺羅はその男達から一定の距離を保ちながら、静かに後を追い始めた。



