星那「……いかないで。」


かすれるような寝言だった。

倉庫が静まり返る。

真尋達も何も言わない。

綺羅は星那を見つめたまま、小さく息を呑む。

(誰に言ってるの……。)

その問いに答える人はいない。

星那は苦しそうに眉を寄せた。

綺羅はそっと星那の頭へ手を添える。

優しく髪を撫でた。


綺羅「大丈夫。私はここにいるよ。」


その声が届いたのかは分からない。

けれどさっきまで強張っていた星那の表情が、少しずつ穏やかになっていく。

袖を掴んでいた力も、少しだけ緩んだ。

静かな寝息が戻る。

その様子を見ていた紫月は、本を閉じることなく静かに呟いた。


紫月「……初めて見た。」


真尋「何が?」


紫月「寝言。星那が眠ってる時に、誰かを求めるなんて。」


その一言に、綺羅はもう一度眠る星那を見つめた。

星那が見ている夢も抱えているものもそのすべてを、まだ綺羅は知らない。

でも。

(いつか……。)

(話してくれる日が来るのかな。)

そんなことを思いながら、綺羅は星那の隣で静かに微笑んだ。