さっきまで机に突っ伏していた九条星那がゆっくり顔を上げた。

青みがかった黒の髪がさらりと揺れる。

眠そうに半分だけ開いた瞳。

本当に今起きたばかりらしい。

というか、起きるんだ。

私は少しだけ驚いた。

あれだけ騒がしかったのに全く反応しなかったくせに。


翔「星那!お前やっと起きたのか!」


翔が大きな声を上げる。

だけど星那は面倒そうに視線だけ向けた。


星那「……眠い」


第一声がそれなんだ。

周りの男子達が慣れた様子で笑う。

どうやらいつもの事らしい。


翔「眠いじゃねぇよ!転校生来たんだぞ!」


翔が私を指差した。

やめてほしい。急に注目されるのは苦手だ。

星那の視線がゆっくりこちらへ向く。

綺麗な目だなと思った。

神秘的に見える紫色をしている。

でもどこか眠そうで何もかもどうでも良さそうな目。

その視線が数秒だけ私に向けられる。

それだけだった。


星那「ふーん」


興味なさそう。

びっくりするくらい興味なさそう。

そしてそのまま再び机に突っ伏した。

早い。寝るまでが早い!


翔「いやいやいや!お前それだけ!?」


翔が叫ぶ。

私も同じ気持ちだった。

いや、別に話したい訳じゃないけどせめてもう少し何かあると思った。

名前を聞くとかよろしくとかさ。普通そういうものじゃないのかな。

まぁいいけど。私も別に仲良くなりたい訳じゃないし。

そう思いながら窓の外へ視線を向けた。

だけど。

ほんの少しだけ。

本当に少しだけ。

隣の変な人が気になった。