綺羅は耳まで真っ赤だった。

(綺羅の膝だからって何……。)

(そんな言い方されたら……。)

恥ずかしくて星那を見られない。

一方の星那は、いつも通り眠そうな顔のまま。

何がおかしいのか、本当に分かっていなかった。


真尋「いやぁ、これは面白ぇもん見たな。」


那瑠「星那にもそんな一面あるんだ。」


綾人「写真撮っとけばよかった。」


綺羅「撮らないで!」


思わず大きな声を出す。

四人はまた笑った。

その笑い声を聞きながら、紫月だけは静かに二人を見つめていた。

綺羅は少しずつ笑顔を取り戻している。

その隣には、いつも星那がいる。

紫月は小さく口元を緩めた。


紫月「……悪くない。」


誰にも聞こえないくらい小さな呟きだった。

昼休み終了を知らせるチャイムが校内へ響く。


真尋「ほら、戻るぞ。」


那瑠「次の授業寝んなよ、星那。」


星那「もう寝た。」


綾人「だから今起きてんだろ。」


みんなが笑いながら屋上を後にする。

綺羅も立ち上がろうとした、その時。

袖が軽く引っ張られた。

振り返ると、星那が綺羅の制服の袖を指先でつまんでいた。


綺羅「星那?」


星那「……また貸して。膝。」


その一言に、綺羅は困ったように笑う。


綺羅「しょうがないなぁ。また眠くなったらね。」


その返事を聞いた星那は、小さく頷く。

その姿を見ていた真尋達は、お互いに顔を見合わせながら苦笑した。

――星那本人は気付いていない。

けれどその視線も、その言葉も。

少しずつ、綺羅だけへ向けられる特別なものへ変わり始めていた。