星那は膝枕をしたまま、小さく笑った。

本当に少しだけ。

昨日、河川敷で見せた笑顔よりも自然だった。

綺羅はその笑顔を見て、思わず見惚れてしまう。

(……笑うとこんな顔するんだ。)

普段は眠そうで無表情だからこそ、その笑顔は反則だった。

綺羅は慌てて視線を逸らす。


綺羅「今日はもう星那と話さない。」


少し拗ねたように頬を膨らませる。

すると星那は膝枕をしたまま、小さく首を横へ振った。


星那「それは困る。」


綺羅「なんで?」


星那「落ち着かない。」


また真顔でまた無意識。

綺羅は両手で顔を覆った。

(この人……。)

(絶対、自覚ない……。)

そう思えば思うほど鼓動は速くなる。

その時だった。

ガチャ――。

屋上の扉が開く音が響く。

二人は同時にそちらを振り向いた。

昼休みの静かな時間を壊すように、誰かが屋上へ入ってくる。

綺羅は反射的に星那を見る。

けれど星那は膝枕をやめる気配がない。

むしろそのまま動かず、眠そうな目だけを扉へ向けていた。

誰が来たのか。

その姿が見えた瞬間、綺羅は思わず固まってしまった。