星那は真っ直ぐ綺羅を見つめたまま、もう一度小さく頷く。
星那「うん。眠いから。」
本当にそれだけらしい。
冗談を言っている様子も、照れている様子もない。
あまりにも真剣な顔に、綺羅は思わず肩を震わせた。
綺羅「もう……星那らしいね。」
苦笑しながら屋上の床へ腰を下ろす。
スカートを整え、軽く膝を叩いた。
綺羅「ほら。少しだけだよ?」
その言葉を待っていたかのように、星那も綺羅の隣へ座る。
そして何の迷いもなくそっと綺羅の膝へ頭を預けた。
ふわりと髪が揺れる。
綺羅は思わず身体を強張らせた。
(ち、近い……。)
男の子を膝枕なんて初めてだった。
どうしていいか分からず、ぎこちなく星那を見下ろす。
そんな綺羅とは対照的に、星那は安心したように小さく息を吐いた。
星那「……落ち着く。」
綺羅「ほんと?」
星那「うん。綺羅だから。」
また無意識。
本人は特別な意味なんてないのだろう。
それでも、その一言は綺羅の胸を簡単に高鳴らせる。
綺羅「そ、そう……。」
顔が熱い。
見られたくなくて視線を逸らす。
すると、星那は安心したようにゆっくり目を閉じた。
数秒後には規則正しい寝息が聞こえ始める。
綺羅「……え。もう寝たの?」
あまりの早さに思わず笑ってしまう。
綺羅「寝るの早すぎ。」
返事はない。
本当に眠ってしまったらしい。
綺羅は困ったように笑いながら、星那の前髪へそっと視線を落とした。
春風が二人の髪を優しく揺らしていく。



