しばらく二人は黙って夕日を眺めていた。

やがて綺羅が小さく口を開く。


綺羅「……でも、私は復讐をやめられない。皇蓮司だけはどうしても許せない。」


その声に迷いはなかった。

星那も分かっていた。

簡単に止められる傷じゃない。

だから「やめろ」とは言わない。

星那は静かに立ち上がる。

そして綺羅へそっと手を差し伸べた。


星那「じゃあ、一人で行くな。」


綺羅はその手を見つめる。


星那「復讐するなら止める。」


綺羅「……え?」


星那「でも、一人では行かせない。」


綺羅は思わず吹き出した。


綺羅「それ、止める気あるの?」


星那は少しだけ口元を緩める。


星那「ある。だから隣にいる。」


その不器用な答えに、綺羅は小さく笑った。

涙のあとに浮かんだ、久しぶりの自然な笑顔だった。

その笑顔を見た星那は胸をなで下ろす。

――守りたい。

その想いは、いつの間にか昨日よりずっと大きくなっていた。

そして遠く離れた廃工場では、皇蓮司が静かに笑っていた。


「月華……。」


「ようやく見つけた。」


復讐の歯車は、再び静かに動き始めようとしていた。