真央は静かに目を閉じた。

「あの日」を思い出すように、小さく息を吐く。


真央「……あれは三年前だった。まだ綺羅も琉羽も中学生だった頃。」


倉庫の空気が静まり返る。

誰も口を挟まない。

真央はゆっくりと語り始めた。










夕方。

学校帰りだった。

綺羅と琉羽は二人で並んで歩いていた。


綺羅「今日さ、新しくできたクレープ屋行こうよ。」


琉羽「また甘いもんか。」


綺羅「いいじゃん!」


他愛ない会話をしながら笑い合う。

そんな、いつも通りの帰り道だった。

突然、細い路地から悲鳴が聞こえた。


「やめてください!」


少女の震えた声だった。

綺羅と琉羽は同時に足を止める。

路地裏を覗くと、高校生くらいの男達が女子中学生を囲んでいた。

制服の胸元には、黒い炎の刺繍。

黒焔だった。


男「金、持ってんだろ。」


少女「ありません……。」


男「嘘つくな。」


少女の腕を乱暴に掴む。

その瞬間だった。


綺羅「その手、離せ。」


静かな声が路地裏へ響いた。