那瑠は机の上に置いてあったジュースを飲みながら、何気ない調子で口を開く。


那瑠「しかし黒焔の奴らもこまったもんだな。」


綺羅「……え?」


那瑠「いや、昨日の相手黒焔の下っ端だったらしいぞ」


あまりにも自然な一言だった。

誰も深い意味なんて考えていない。

ただ昨日の出来事を話しているだけ。

綺羅だけが固まった。


綺羅「……黒焔?」


ゆっくり聞き返す。

真尋は不思議そうに頷いた。


真尋「あぁ。この辺りを縄張りにしてる卑怯な族」


綺羅の呼吸が止まる。

拳が膝の上でゆっくり握り締められていく。


綺羅「……この街に。」


誰にも聞こえないほど小さな声だった。

綾人が首を傾げる。


綾人「ん?」


綺羅は震える唇を押さえながら顔を上げる。


綺羅「黒焔が……。この街にいるの?」


その表情を見て、ようやく煌月の全員が異変に気付く。

さっきまで穏やかだった綺羅の瞳には、驚きと、押し殺した怒りが静かに滲んでいた。

倉庫の空気が、ゆっくりと張り詰めていく。