桐斗「自己紹介」


桐斗が短く言う。

そんな丸投げある?もうすこしなんかないの?

少しだけ恨めしく思いながら前を見る。

何十人もの男子生徒。

全員こっちを見ている。

無理なんだけど、本当に嫌。本当に無理。

だけど黙っているわけにもいかない。

小さく息を吸った。


綺羅「雨宮綺羅です」


自分でも驚くくらいあっさりした自己紹介だった。なんかもう少しなんかいうべきだったかな?でも対してなんか言うこともないもんな。

すると数秒の沈黙の後。

「女だ……」

誰かが呟いた。

その一言を合図にしたように教室が爆発した。

「マジで女!?」

「夢じゃないよな!?」

「月ヶ瀬終わった!」

「いや始まっただろ!」

「転校してきてよかったぁぁぁ!」

うるさい。

ものすごくうるさい。

耳が痛い。

なんなのこの人たち。

動物園?

いや動物園に失礼かもしれない。

そんなことを思いながら教室を見渡していると、一番後ろの窓際の席で一人だけ机に突っ伏している人がいた。

騒ぎになっているのに起きる気配がない。

というか微動だにしない。

寝てる?

あんなにうるさいのに?

ある意味すごい。

少しだけ気になって、その姿を見つめた。